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マイナス原油の衝撃~アブラ買ったブラ?~

6月1日の部会における時事経済研究部新入生の個人研究発表を紹介させていただきます。



 発表者は2020年4月21日にWIT原油先物価格がマイナス圏に突入したというニュースに関心を持ち、その背景をマクロ的な視点とミクロ的な視点に分類して研究しました。


 


 まずマクロ的な視点から、米国中心のWIT原油の価格マイナス圏突入の要因として、新型コロナウイルスの流行による経済失速と原油の需要低下、それに対し減産が適切に行われず一部の産油国が増産に走ったという背景を示しました。


 

 

 特に供給の調整が適切に行われなかったという点に注目し、その理由を三つ示しました。


・生産停止による原油とガスの分離、それによる原油の移動の妨げが将来の生産性に与える影響

・WIT原油の中心を占めるシェールオイル生産における利息支払い

・アメリカのシェールオイル生産へ打撃を与えたい競争国の思惑

 


 このような減産のデメリットと政治的な理由のため、WIT原油は需給のバランスが調整されず崩壊したと発表者は指摘しました。


 次にミクロ的な視点から、中国、特に中国銀行が取引していた原油関連金融商品の商品設計上のミスが背景にあると指摘しました。


 当時中国外貨管理局は原油関連商品の価格の低下を受け底値で原油関連商品を買いたいと望む投資家が殺到することを懸念し、その購入を制限する政策をとっていました。それに対し中国の大手銀行は実際の原油関連商品の代わりに価格と連動するが現物を引き受ける能力の無い「紙原油」と呼ばれる金融商品を販売しました。これは原油先物の期近のものを買い、最終取引日までにその次の月に最終取引日があるものに買い替える仕組みとなっていましたが、中国銀行はこの買い替え日をWIT石油最終取引日前日に設定したことで、この日の前後で商品価格が急減する事態となりました。それを受けて商品に対し多くの空売りが仕掛けられ、原油価格が急落したことを見出しました。


 以上の要因によりWIT原油先物価格のマイナス圏突入の背景を解明した発表者は、歴史的に見て湾岸戦争やソ連崩壊などの事の要因に原油価格の変動があることに注目し、原油安が続けば今後アメリカの国民の目をそらすための軍事挑発やイラン、ロシアの原油価格低下による収入減が中東の新たな紛争に繋がる可能性が高いことを結論として述べました。


以上、6月1日の部会の個人研究発表でした。実際の論文をご覧になりたい方などは公式サイトからお問い合わせください。


以下のページは6月1日の部会報告となります。












 



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